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IllustratorデザインをAIコーディングに渡す前の前処理メモ
導入メモ
最近、イラレ案件を受けたときに「まずAIへ投げてコーディング案を出してもらう」流れを試している。最初はかなり使える感触があったけど、ファイルによって出力精度の差が大きい。
ほぼそのまま使えることもあれば、HTML構造もCSS設計も崩れていて、手で書いたほうが早いケースもある。何件か試して見えてきたのは、AIの性能差というより、渡すIllustratorデータの作り方がかなり効いているということ。
🎨 Figma案件とイラレ案件でAIの読み取り精度が変わる理由
FigmaはWebやアプリUIを作る前提のツールなので、オートレイアウトやコンポーネントの考え方がそのままHTML/CSSの構造に近い。Flexboxやコンポーネント設計に変換しやすく、AIも「このまとまりはセクション」「この並びはカード一覧」みたいに読み取りやすい。
一方でIllustratorは、もともと印刷物・ロゴ・イラスト制作寄りのツール。Web実装を前提にした構造情報が自然に入るわけではない。
| 観点 | Figma | Illustrator |
|---|---|---|
| 主な用途 | UI/UXデザイン | 印刷物・ロゴ・グラフィック |
| 構造の持ち方 | フレーム、オートレイアウト、コンポーネント | レイヤー、グループ、アートボード |
| AIが読み取りやすい情報 | レイアウト構造、余白、繰り返しパーツ | 命名・整理されていれば読み取れる |
| 実装との相性 | 比較的高い | データ整理に左右される |
つまり、イラレ案件では「AIに渡す前の前処理」がかなり効く。もらったデータをそのまま投げるより、5分だけ確認してから渡したほうが、後工程の修正が減りやすい。
🧩 1. レイヤー名・グループ名を見る
まず見るのはレイヤー名とグループ名。AIが構造を判断するときのかなり大きな手がかりになる。
| ダメな例 | 良い例 |
|---|---|
| グループ | header |
| グループ のコピー | hero-section |
| 長方形 | cta-button |
| レイヤー 4 | footer-nav |
「グループ のコピー」が大量に並んでいるデータは、人間でも構造を追いにくい。AIにとっても同じで、どこがヘッダーで、どこがメインビジュアルで、どこがCTAなのかを推測するしかなくなる。
チェック方法
Illustratorのレイヤーパネルを開いて、上から順に名前を見る。英語名でなくても、「ヘッダー」「ヒーロー」「ボタン」「フッター」くらいの日本語名ならAIも理解しやすい。
ダメだったとき
小規模なら自分でリネームする。大きめの案件なら、デザイナーさんに「AIコーディングに渡す前提で、主要グループ名だけ整えてほしい」と依頼したほうが早い。
♻️ 2. 共通パーツがシンボル化されているか
ボタン、カード、見出し、ナビゲーションなど、何度も出てくるパーツがシンボル化されているかを見る。
シンボル化されていると、AIが「これは共通コンポーネント」と判断しやすい。ReactやVueならコンポーネント分割、通常のHTML/CSSなら共通クラス化につなげやすくなる。
| 状態 | AIの解釈 |
|---|---|
| 同じボタンが毎回別オブジェクト | 個別スタイルとして扱いやすい |
| ボタンがシンボル化されている | 共通コンポーネントとして扱いやすい |
| カードUIが統一されている | 配列データやループ構造にしやすい |
| 見た目だけ似ていて微妙に違う | CSSが散らばりやすい |
チェック方法
シンボルパネルを見る。空っぽの場合、共通パーツとしての情報はほぼ渡っていないと考える。
ダメだったとき
全部を直す必要はない。ボタン、カード、CTA、ナビゲーションなど、頻出パーツだけでもシンボル化しておくと、AIの設計がかなり安定しやすい。
✍️ 3. 段落スタイル・文字スタイルを見る
段落スタイルや文字スタイルは、CSSのクラス設計に近い情報になる。
たとえば「見出しH1」「本文」「キャプション」のようにスタイルが定義されていれば、AIはテキストの役割を判断しやすくなる。
.heading-1 {
font-size: 36px;
font-weight: 700;
}
.body-text {
font-size: 16px;
line-height: 1.8;
}
逆に、すべてのテキストが個別に設定されていると、AIはフォントサイズや位置から役割を推測することになる。これだと、見た目は近くてもCSS設計が散らかりやすい。
| 見るポイント | 理由 |
|---|---|
| 見出しスタイルがあるか | hタグ設計に使いやすい |
| 本文スタイルがあるか | 共通CSS化しやすい |
| キャプションや注釈が分かれているか | 小さいテキストの扱いが安定する |
| フォントサイズがバラバラすぎないか | CSSの肥大化を防ぎやすい |
チェック方法
書式メニューから段落スタイル・文字スタイルパネルを確認する。
ダメだったとき
スタイルが未設定でも、AIに渡す前にフォントサイズ一覧だけ作っておくと変わる。
H1: 36px / Bold
H2: 28px / Bold
本文: 16px / Regular
注釈: 12px / Regular
この情報をプロンプトに添えるだけでも、CSS設計がかなり整理されやすい。
🎨 4. スウォッチで色管理されているか
色が名前付きスウォッチやグローバルカラーで管理されていると、AIがCSS変数に落とし込みやすい。
:root {
--color-primary: #1A73E8;
--color-secondary: #34A853;
--color-text: #333333;
}
逆に、色がすべてオブジェクトごとに直接指定されていると、AIは色の意味を読み取りにくい。結果として、同じような色がCSS内に何度も直書きされる。
| 状態 | 出力されやすいCSS |
|---|---|
| スウォッチで管理 | CSS変数化されやすい |
| 色名がPrimaryなどで整理 | デザイントークン化しやすい |
| 色がベタ打ち | 直書きCSSになりやすい |
| 似た色が大量にある | 余計なカラー定義が増えやすい |
チェック方法
スウォッチパネルを開いて、使用色が整理されているかを見る。グローバルカラーとして管理されていればなお良い。
ダメだったとき
主要カラーだけでも手動で一覧化してAIに渡す。
Primary: #c87577
Accent: #8aab98
Background: #fdf9f7
Text: #3d3030
色の意味を添えるだけで、AIがCSS変数名を作りやすくなる。
📱 5. アートボードでブレイクポイントが分かれているか
PC、タブレット、スマホでアートボードが分かれていると、AIがレスポンシブ設計を読み取りやすい。
| アートボード | 例 |
|---|---|
| PC | 1440px / 1920px |
| タブレット | 768px / 1024px |
| スマホ | 375px / 390px |
PC版しかない状態でAIに渡すと、スマホ時のレイアウトはかなり推測に寄る。デザイン意図と違う崩し方をされることもある。
チェック方法
アートボードパネルで幅を見る。PC、タブレット、スマホのパターンがあるか確認する。
ダメだったとき
PC版しかない場合は、プロンプトでスマホ幅を明示する。
スマホは375px基準で実装。
カードは1列表示。
ヘッダーナビはハンバーガーメニュー化。
CTAボタンは幅100%。
軽いワイヤーでもいいので、スマホ時の並びだけ決めてから渡すと精度が上がる。
⚠️ AIが特に困りやすいイラレデータ
AIに渡す前に、これは先に見ておきたい。
| 状態 | 困る理由 | 対応 |
|---|---|---|
| テキストがアウトライン化されている | 文字情報が消えている | アウトライン前のデータを依頼 |
| オブジェクトが画像化されている | 構造情報が取れない | 元データを依頼 |
| クリッピングマスクが多すぎる | 階層が複雑になりやすい | 必要箇所だけ整理 |
| アートボード外にメモが大量にある | AIにとってノイズになりやすい | 渡す前に削除 or 別資料化 |
| 似たパーツが微妙に違う | 共通化しにくい | コンポーネント候補を整理 |
特にアウトライン化されたテキストはきつい。見た目は文字でも、実体はパスなので、AIにとってはテキスト情報ではなく図形になる。コーディング前提なら、アウトライン前のデータをもらったほうがいい。
🧪 AIに渡す前の前処理フロー
イラレ案件を受けたら、いきなりAIに投げる前にこの順番で見る。
| 順番 | チェック項目 | 見ること | ダメなとき |
|---|---|---|---|
| 1 | レイヤー名 | header、hero、footerなどが分かるか | 主要グループだけリネーム |
| 2 | シンボル | 共通パーツが管理されているか | 頻出パーツだけシンボル化 |
| 3 | 文字スタイル | 見出し・本文が分かれているか | フォントサイズ一覧を作る |
| 4 | スウォッチ | 色が意味付きで管理されているか | 使用色一覧を作る |
| 5 | アートボード | ブレイクポイントがあるか | スマホ幅と崩し方を明示 |
この前処理をしてからAIに渡すと、HTML構造、CSS設計、コンポーネント分割の精度が変わる。
🧾 AIに渡すときのプロンプト例
イラレデータをそのまま渡すだけではなく、補足情報を添えると安定しやすい。
このIllustratorデザインをもとに、HTML/CSSで実装してください。
前提:
- PC幅は1440px基準
- スマホは375px基準
- header / hero / service / cta / footer の構成
- ボタンは共通コンポーネントとして扱う
- 色はCSS変数で管理する
- 見出し、本文、注釈のスタイルを共通化する
- レスポンシブではカードをPC 3列、スマホ 1列にする
出力:
- セマンティックなHTML
- 保守しやすいCSS
- 共通パーツはクラス化
- 不明点は推測せず、コメントで残す
AIに「デザインを見ていい感じに実装して」と渡すより、構造・共通化・レスポンシブの判断材料を先に渡したほうが、使えるコードになりやすい。
📝 まとめ
イラレ案件をAIにコーディングさせるとき、精度を左右するのはAIそのものだけではない。渡すデザインデータに、どれだけ構造情報が残っているかがかなり大きい。
見るポイントはこの5つ。
| チェック | AIに効く理由 |
|---|---|
| レイヤー名・グループ名 | HTML構造を判断しやすい |
| シンボル | 共通コンポーネント化しやすい |
| 段落スタイル・文字スタイル | CSS設計に落とし込みやすい |
| スウォッチ | CSS変数化しやすい |
| アートボード | レスポンシブ設計しやすい |
「もらったままAIに投げる」は、うまくいく時もあるけど外れた時の修正コストが大きい。最初に5分だけデータを見る。その5分で、あとから1時間助かるケースは普通にある。